【戦後最大の人権侵害】違憲であると認められた「旧優生保護法」ってどんな法律?何が問題?守られなかった”障害者の権利”

KANA

こんにちは!KANAです。

みなさんは、「旧優生保護法」という、過去に日本に存在した法律をご存じでしょうか。数年前からテレビなどでも取り上げられるようになったので、聞いたことがある、という人も多いかもしれません。本記事では、そんな旧優生保護法とその問題点などについて解説していきます。

目次

旧優生保護法とは?何が問題?

「旧優生保護法」という言葉は聞いたことがあるけれど、実際にどんな法律だったのか、詳しくは知らないという人も多いのではないでしょうか。旧優生保護法とは、次のような法律でした。

旧優生保護法とは?

旧優生保護法とは、1948年から1996年まで日本に存在した法律で、当時ヨーロッパやアメリカで提唱されていた「優生学」をもとにして作られたものです。当時の世界は「遺伝子的に優れている子孫だけを残そう」といった「優生思想」が各国に根付いており、障害や疾患を持つ人は「不良」とされていました。その流れに乗った日本もまた、このような法律を定め、国を挙げて優生政策が行われてきたのです。

「旧優生保護法」は何が問題?

当時、日本では「不良な子孫を残さない」ための優生政策として、本人の同意を得ずとも強制的に遂行可能な優生手術(強制不妊手術 / 人口妊娠中絶)が認められていました。国が推し進めていた政策であるため、当事者の両親が進んでわが子へ手術をさせる家庭も少なくなかったそうです。強制不妊手術の被害者の中には、「何もわからないまま病院に連れていかれ、気づいたら子供を産めない身体になっていた」と話す人も。

この政策によって、およそ1万6千人もの障害者が強制的に不妊手術を受けさせられたと言われており、本人の意思決定の権利を無視したこの法律や政策は、「戦後最大の人権侵害」だと言われています。

KANA

つい30年前までこの法律が日本に存在していたのだと思うと・・ゾッとしますね。

「旧優生保護法は違憲」30年以上の時を経て、いま問題視されるように

旧優生保護法が「憲法違反では?」と騒がれ始めたのは、2018年のこと。実は、思いのほかつい最近のことなのですね。きっかけは、東北に住む一人の女性からでした。

裁判のきっかけ

はじまりは。強制不妊手術の被害者である宮城県在住の知的障害のある女性が国に対して損害賠償を求めて訴訟を起こしたことでした。これをきっかけに、その後あらゆる地方で同様の追加訴訟が相次ぎます。全国に広がる訴訟を受けて国は、強制不妊手術を受けた被害者の方々に数百万円の一時金を支給する救済法を2019年に成立・施行しました。

裁判の結果は・・・

最初の判決である2019年の仙台地裁の判決では、「旧優生保護法は憲法に違反していた」という判断が示されました。しかしながら、原告が求めていた賠償については、「除斥期間」が過ぎているとして、訴えは棄却されてしまったのです。同様に除斥期間が適用され、その他の各地での裁判でも敗訴状態が相次ぎました。

※除斥期間(じょせききかん)とは・・・
除斥期間は、不法行為から20年を経過すると損害賠償を求める権利が失われるというもの。
強制不妊手術からすでに20年以上が経過しているため、当事者が賠償請求をする権利はもうない、とされた

2022年、歴史を変える判決が。「除斥期間を適用しない」

KANA

流れを変えたのは2022年2月の大阪地裁です!

時を超えた「正義」の判決

2022年2月、大阪高裁で歴史を塗り替える判決が出ました。旧優生保護法を違憲とし、さらに「除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」として、除斥期間を適用せずに国に賠償を命じたのです。さらに翌月には、東京高裁で行われた同様の裁判においても、同じく旧優生保護法は違憲としたうえで、除斥期間を適用せず、国に賠償命令が下されました。

平田裁判長の「所感」が話題に

また、東京高裁の平田豊裁判長の述べた「所感」がステキだと話題になりました。

平田裁判長の所感全文
控訴人は本件優性呪術により、憲法が保障する平等権、幸福になる権利を侵害され、子をもうけることのできない身体にされました。しかし、決して、人としての価値が低くなったわけでも、幸福になる権利を失ったわけでもありません。「優生手術は被害者の幸福の可能性を一方的に奪い去るもどである」等と言われえることがありますが、子をもうけることのできない人も個人として尊重され、他の人と平等に、幸福になる権利を有しているじりは言うまでもありません。優生手術が違憲・違法なものであること、その被害者に多大な精神的・肉体的な損害を与えたことは明確にされなければなりませんが、これに対する憤りのあまり逆に優生手術の被害者を含む、子をもうけることのできない人たちに対する差別を確認し、または助長することとなり、その人たちの心情を傷つけることがあってはならないと考えます。報道等の際にも、十分留意していただきたいと思います。
控訴人には、自らの身体のこと、優生手術をうけたこと、本件訴訟を提起したこと等によって、差別されることなく、これからも幸せに過ごしてもらいたいと願いますが、それを可能とする差別のない社会を作っていくのは、国はもちろん、社会全体の責任であると考えます。そのためにも、優生手術から長い年月がたった後に提起された訴えであっても、その間に提訴できなかった事情が認められる以上、国の責任を不問に付すのは相当ではないと考えました。

この裁判において、「幸せになる権利を奪われた!」という声が、被害者やその関係者らから多く叫ばれていました。しかし、その考え方は「子をもうけることのできない人は幸せになれない」といった、また別の偏見が潜んでいることに言及し、新たな差別を生まないよう配慮を求める内容でした。平田裁判官の「幸福」に関する多角的な所感や、「差別のない社会をつくっていくのは社会全体の責任」という言葉が印象的で、非常に重みを感じました。

現在の裁判の状況は?国はいまだに判決に納得していない模様・・

KANA

実はまだ、終わっていない・・・

東京・大阪についで2023年3月には、札幌高裁も同様の判決を下し、国に賠償命令を言い渡しています。しかしながら、国側は一貫してこの判決を不服としており、最高裁に上告しています。これにより、いまだ裁判は終結せず、最高裁判まで持ち越されることとなりました。

訴えを起こした原告の方々は高齢者が多数。裁判が長引けば長引くほど、彼らの負担も大きくなります。実際に、裁判の途中で亡くなられた方々もいらっしゃいます。これ以上裁判を長引かせて、いったい何になるのでしょう・・。国が最高裁に上告した後、日本ろうあ連盟はじめ、多くの障害者団体が抗議の声明文を発表しています。

最高裁ではすべての裁判が統一される模様(2023.12現在)

最高裁判所は、旧優生保護法が憲法に違反していたかどうかや、賠償を求める権利があるかどうかについて、15人の裁判官全員による大法廷での審理を決めました。各地の裁判でさまざまな判断が示されるなか、最高裁ではすべての裁判と統一し、その判断が示される見通しになりました。

詳細:不妊手術強制の旧優生保護法めぐる訴訟で統一判断へ 最高裁(外部リンク)

まとめ

今回は、旧優生保護法とそれに基づく強制不妊手術やその裁判についてご紹介しました。なんとも胸の締め付けられるひどい歴史ですが、差別や偏見のない社会づくりのためにも、学びを続け、今後の裁判等の動向にも注目していきたいです。

KANA

最後までお読みいただきありがとうございました☻

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